まずは「キャリアパス」という言葉の意味を確認しましょう。キャリアパスとは、一定の職位や役職に就くまでに必要な経験やそこに辿りつくまでのルートのことを指します。キャリアパスが明確になっていれば、自分の目標とする職位や役職に就くためにどのような業務を経験し、何の資格を取得すべきなのかが分かります。特に人材不足が叫ばれている介護業界においては、キャリアパスが重要な要素となります。
介護業界にキャリアパスが必要とされる理由は「人材の確保や定着」のためです。人材を定着させるためには、充実感を持ちながら長く働ける環境を整える必要があります。能力や資格などに応じてキャリアアップできる仕組みを構築し、明確に提示することで、労働者は今後自分にどのようなスキルが必要になるかを考え、行動に移すことができるのです。事業所側としては人材不足を回避し、スキルを持った介護士が定着することでサービスの質向上にもつながります。キャリアパスを提示することは介護士と事業所双方にとってメリットがあります。
介護関連の資格は多岐に渡ります。そのため、少し前までは「どの資格を取得すればいいのか分からない」という疑問がありました。その疑問を解消するため、現在は国家資格である「介護福祉士」を目指すまでのキャリアパスが明確化されています。これから介護士として働く人は、「介護職員初任者研修→実務者研修→介護福祉士」の順に資格を取得していくことになります。
介護職員初任者研修は、介護士として仕事をする上で最初に取得すべき資格です。無資格でも働ける職場はありますが、この資格を取得しておけば業務の幅が広がり、待遇アップにもつながります。介護職員初任者研修を取得するためには、民間のスクールなどに通い130時間の研修を受講する必要があります。
介護職員初任者研修を取得した後は、上位資格にあたる実務者研修の取得を目指します。基本的な内容に加えて、「介護課程の展開」や「医療的ケア」といった専門的なスキルを身に付けられます。実務者研修を取得した者は訪問介護事業所のサービス提供責任者として働くことができます。
実務者研修を取得し、一定の実務経験を積んだ者には介護福祉士の受験資格が与えられます。介護職で唯一の国家資格であり、取得すれば待遇アップにつながるだけでなく、上位の役職にも就けるでしょう。なお、介護福祉士の国家試験は年に一度開催されています。
新人の頃は基礎力を身に付けて業務に慣れることから始まります。3年ほど経験を積んだ後は上位資格の取得を目指しましょう。ベテランになってからでも「ケアマネジャー」や「社会福祉士」などの資格を取得することでより高度な業務に関われます。